冬美は小さな顔を上げて空を見ながら、曖昧に言った。「私たち大丈夫よ、ただあれを遊ぶのが大好きで……えっと、本当に大丈夫、ただ特別好きなだけ……」
北原秀次も頭を下げたり腰を曲げたりする勇気がなく、同じようにベンチに寝そべって空を見上げながら、同意して言った。「確かに、あれは面白いよね。誤解しないでください、私たちは喧嘩しているわけじゃない、ただちょっと耐久力を競い合っただけです。」
二人とも皆の遊び気分を台無しにしたくなかったが、言い終わって目が合うと、空中で電光が走りそうな雰囲気だった。
冬美は少し黙った後、まだ納得できない様子で、耐久力と目眩耐性なら絶対的な優位があるはずだと思い、遠くにバンパーカーがあるのを見て北原秀次に尋ねた。「あれに乗りたい?」
今日こそあなたを吐かせてやる、一生であなたに一度も勝てないなんてありえない!後でぶつけて殺してやる!
北原秀次は全く動じる様子もなく、落ち着いて頷いた。「乗りたいね。」
いつも調子に乗って、負けるたびに種目を変えて、いろいろ不服そうにして、今日こそまた大恥をかかせてやる!
「じゃあ、行きましょうか?」
「ああ、行こう!」
二人は互いに強気な言葉を交わしていたが、どちらも立ち上がれず、その場で動けないでいた。周りの人たちは皆呆れ返っていた。そんなに勝負にこだわるの?遊園地でまで競い合わなきゃいけないの?どちらかが譲れないの?
春菜は急いで言った。「お姉ちゃん、北原にーさん、みんなお腹すいてるんだけど、先に食事しない?」
これは重要な事で、二人のせいで皆を空腹にさせるわけにはいかない。冬美と北原秀次は目を合わせて頷き、一時休戦することにした。しかし二人とも動けない状態だったので、式島律が自主的におにぎりを買いに走り、力持ちの雪里も興奮して労働力として付いて行き、ついでに他に美味しいものがないか探しに行った。
すぐに式島律はおにぎりを持って戻ってきたが、雪里の姿が見えなかった。春菜が急いで尋ねると、式島律は少し困った様子で言った。「向こうで大食い競争があるって聞いて、雪里さんがすぐに参加しに行ってしまって、止められなかったんです。申し訳ありません。」