第170章 城の中にいる正統な姫

北原秀次は周囲の様子に気を配りながら、鈴木希を下水道内の平台に一時的に休ませた。人を背負って逃げるのは、走る方も背負われる方も快適ではない。特に鈴木希は体が非常に弱っていて、すぐには死なないものの、体中まともな部分がほとんどないようだった。

日本の下水道は常に整備が行き届いているが、いわゆる「職人魂」というよりも、やむを得ない事情からだ。

年に最低3回、多い時は5、6回も台風が来る。毎回、暴風雨を伴い、降水量は50ミリ以上、しばしば100ミリを超える。普段から雨の多い気候なので、下水道をきちんと整備しなければ、都市は腐敗してしまう。都市で洪水が起きないわけではなく、下水道が整備されている近年でも事故が起き、数十人が溺死する事件があった。

また、雨水の滞留は多くの病気を引き起こす。例えば日本では吸血虫病や水腫病が蔓延したことがあり、市民がデモ行進を行い、与党の頭を叩き割りそうになった後で、今日の下水道システムが出来上がった。法制化され、日本には専門の『下水道法』があり、雨水と生活排水は別々のシステムで排出される。雨水排水と洪水対策用の下水道は非常に高い基準で建設され、コンクリート打設され、主管は車が通れるほど広く、排水立坑はミサイル発射井のようで、排水ポンプ室には航空機エンジンを動力とする大出力ポンプが設置されている。

もちろん、下水道はどんなに整備されていても下水道であり、非常に寒く、臭いも良くない。湿った腐敗臭が漂い、専門の保守点検員以外は普通下りてこない。地上と比べて管理も緩い。北原秀次と鈴木希は追っ手に追われ続け、パトカーのサイレンが近づいてきても、悪党たちは逃げる気配を見せず、鈴木希を捕まえるか殺すまでは諦めないようだった。彼らは一瞬、この悪党たちの立場に立って、警察に追われた時どうするかを考え、すぐに雨水井から逃げることを思いついた。

雨水井から都市の排水路に入り、これらの通路は縦横に走り、街全体を繋いでいる。警察が気付く頃には、これらの悪党たちは通路を伝って海まで逃げ出しているかもしれない。そこには船が待機しているのだろう。鈴木希を捕まえるか殺した後なら、おそらく彼らは車を捨ててそのまま逃げ出し、悠々と、映画のような警察との大立ち回りをする必要もない。