「律、大ニュースだよ。聞きたい?」
内田雄馬は弁当箱を持って遠慮なく北原秀次の席に座り、振り向いて式島律にニヤニヤと笑いかけた。席替えがあったばかりで、式島律は北原秀次の後ろになり、内田雄馬は一列目に移動したため、三人で固まることができなくなっていた。
最近、彼らは食堂で食事をしなくなった。北原秀次の弁当があまりにも美味しかったため、内田雄馬は少し病みつきになってしまい、北原秀次と交換しやすいように自分も弁当を持ってくるようになった。そして三人のうち二人が弁当を持ってくるなら、式島律も自分で作って持ってくるようになった。
ちなみに、受験勉強中の式島葉も弁当を食べるようになった。どうせ弟が作るなら、食べないと損だと思ったからだ。弟という生き物は、姉に仕えるのが当然の道理なのだ。
式島律は北原秀次からもらったメモを見ていたので、顔も上げずに「聞きたくない」と言った。聞かなくても何の話かは想像できた。誰と誰が付き合い始めた、誰と誰が別れた、あるいは新しく転校してきた女子の胸が大きいとか、そんな話に決まっている。この幼なじみは日頃からそういうことばかり気にしているのだから。
しかし内田雄馬は意地悪そうに左右を見回してから、小声で「北原についての超大ニュースだよ」と言った。
式島律は驚いて顔を上げ、我慢しようとしたものの結局「どんなニュース?」と聞いてしまった。
内田雄馬はクスクス笑い出したが、すぐに頭を下げ、まるで式島律に違法薬物を売りつけようとするかのように、こそこそと言った。「確かな情報によると、北原と小さい人が付き合い始めたらしくて、今みんなが北原と福沢姉妹が三角関係に陥ったって噂してるんだ」
式島律はペンを持って躊躇なく内田雄馬を突き刺し、怒って「そんなデタラメを言うな!」と叫んだ。
青梅竹馬の親友として、彼は内田雄馬というこの厄介者の性格をよく知っていた。彼の言う「確かな情報」とは基本的にデマや作り話を意味し、一言も信用できないのだ。信じる方が馬鹿だ。