第285章 雪里さんの体に魂が転生

安井愛は笑顔が0.2秒だけ固まったものの、すぐに優しい表情を取り戻し、謙虚に言った。「真子ちゃんは褒め上手ね。私なんてごく普通だと思うわ。二位なんてあり得ないわ……」そして、好奇心に満ちた様子で尋ねた。「一位は誰なの？どの先輩？」

この学校にアイドルがいるの？聞いたことないわ。まさか、よくある路上アイドルとか、裏通りの歌姫じゃないでしょうね？

高崎真子は笑って答えた。「先輩じゃないわ。私たちの同級生よ。H組の福泽雪里さん」

へぇ、同級生なの？安井愛はさらに興味を持ち、満面の笑みで尋ねた。「彼女、きれいなの？」

高崎真子は目の前の安井愛を見つめ、少し躊躇してから言った。「比べるなら、雪里さんの容姿とスタイルはあいちゃんとほぼ同じかな。知名度も...あいちゃんは有名な雑誌の高校生モデルで、雪里さんは高校剣道の全国チャンピオンだから、それも似たようなものだけど...」

彼女は本能的に安井愛が雪里より何かが足りないと感じていたが、具体的に説明しようとすると、うまく言葉にできなかった。周りの女子たちも深く考え込んでしまい、この問題は奥が深いと突然感じ始めた。そのとき、一人の女子が偶然窓の外を見て、嬉しそうに言った。「H組の体育の時間みたい。雪里さんもいるはずよ」

女子たちは一斉に窓際に集まり、実物を比較しようとした。安井愛も鋭い視線を向け、グラウンドを見渡して、自分と比べられるような女子を探そうとした。

絶対にありえないわ。私は最も完璧な女子なんだから。相手が私の半分でも及べばすごいものよ。

グラウンドの女子たちは皆同じ体操服を着ていて、遠くからは名前が見えにくく、しかも女子たちが輪になって固まっていたので、確認しづらかった。でもすぐに、その集団が少し散らばり、真ん中で逆立ちをしている女子が見えた...

高崎真子は呆然と見つめ、思わず指さして言った。「あいちゃん、あれが雪里さんよ」

安井愛は急いで目を凝らした。その女子は逆立ちをしていた—冬の体操服はズボンだから、女子が逆立ちしても大丈夫なはずだが、その女子は何かを必死に口の中で咀嚼していて、それは長い食パンのようだった...

逆立ちしながらパンを食べているの？

安井愛は少し呆然とした。遠くから見ると、その女子のスタイルは確かに良かったが、この行動はあまりにもおバカすぎないか？女神らしさなんて微塵もない。この学校の生徒たちの審美眼は特殊で、こんなモンキーのような女子が好きなの？

彼女には理解できなかった。思わず高崎真子の方を振り向くと、高崎真子も少し黙り込んでから、気まずそうに言った。「雪里さんは性格がとてもいいって聞いてるわ。話し方も面白くて、みんなと冗談を言うのが好きみたいで...」

彼女の言葉が終わらないうちに、雪里は逆立ちしたままパンを無理やり飲み込もうとしたが、どうやら喉に詰まってしまったようで、最後は手が緩んで頭から地面に突っ込んだ。倒れはしなかったものの、首を押さえながら長い足を天に向かって必死にバタバタさせていた。

周りの女子たちは一斉に驚きの声を上げ、支える者、水を与える者、胸を叩く者、手を拭く者、髪の毛を整える者と、まさにクラスの人気者である雪里が、クラスメイトたちから深く愛されていることがよく分かった。

グラウンドの混乱した光景を見て、高崎真子も説明のしようがなくなった—雪里さん、転校生の前で学校の面目を少しは立ててくれないの？

安井愛は視線を戻し、少し俯いて、誰にも顔の得意げな笑みを見られないようにした—こんな女子が私と比べられるはずがない。世の中にこんな女子がいるなんて！女子は可愛らしく、控えめで優しくあるべきで、そうしてこそみんなに好かれるのに。この知的障害児みたいな子が女子と呼べるかどうかも怪しいわ！

でも...

B組の女子たちは、グラウンドで死んでも食パンを吐き出そうとせず、首を突っ張って無理やり飲み込もうとする雪里を見て、そして傍らの優しく美しく、静かな安井愛を見比べた。比べると大きな違いがあるように感じたが、それでも雪里の方が心の中で少し上だと感じた。でも、それはなぜだろう？

みんなしばらく考えた後、突然ある女子が小声で言った。「みんなが雪里さんをすごいと思うのは、雪里さんの彼氏がいるからじゃない...？」

安井愛は顔を上げ、少し理解できない様子だったが、周りの女子たちが皆うなずき、なるほどという表情をしているのを見て、疑問を投げかけた。「それが雪里さんの彼氏とどう関係があるの？」

女子は清純で、誰に対しても優しく親切であるべきだけど、身を慎まなければならない。そうしてこそ広く人気を得られるはず。付き合うということは、一本の木のために森全体を諦めるようなもの。人気は必ず急落するわ。そんなバカなことって！

高崎真子は少し暗い表情で振り返り、小声で言った。「雪里さんは私たちにはできないことをやってのけたの」

安井愛は彼女の視線の先を見やると、一人の端正な顔立ちの男子学生が鉛筆を削りながら本を読んでいるのが目に入った。最初は特に変わったところはないと思ったが、目を逸らそうとした時、なぜか視線が離せなくなっていた—その男子学生が本を読む姿は人を引き付け、手の動きにも不思議なリズムがあり、全体的な雰囲気はブラックホールのように、静かな中に危険が潜んでいた。一度視線を向けると、まるで吸い込まれそうな感覚になるのに、どういうわけか自然と好感を抱き、とても信頼できる人物だと感じた。

彼女は一瞬心臓が止まりそうになり、思わず耳元の髪をかき上げ、その男子学生が自分の方を見てくれることを切に願った。しかし、すぐに頭の中で何かが警告を発し、異変に気付き、強い意志で視線を逸らした。