葉辰が洗面所から出てきたところ、ちょうどお茶菓子を運んでいる可愛らしい女性が彼の個室に向かっているのに出くわした。
彼は個室に誰かが邪魔しに来るのを望まなかったので、その可愛らしい女性に「それは私が持っていきます」と指示した。
スタイルの良い美人ウェイトレスは、葉辰が個室の主人であることを当然知っていた。前例はなかったものの、うなずいて慎重に葉辰に手渡した。
「葉様、何かございましたら、テーブルのボタンを押してください」
彼女にはよくわかっていた。相手は若く見えるが、御豪クラブに入れる人物は、彼女が敵に回してはいけない存在だということを!
女性スタッフを見送った後、葉辰はお茶菓子を持って個室に入ろうとした。
突然、背後から澄んだ女性の声が聞こえた。
「葉辰?」
その澄んだ声を聞いて、葉辰の体は石のように固まった。