この言葉を聞いて、爆発寸前だった鐘偉山は突然凍りついた!
彼の瞳は血走っていた!
そして次第に赤くなっていった!
死んでも、唐元軒という名前を忘れることはできないからだ!
もしあの畜生がいなければ、息子と嫁は死ななかったはずだ!
自分も今のような境遇に落ちることはなかった!
幸せだった家庭が、唐家のあの畜生によって台無しにされた!
息子はまだ二十七歳だったのに!
これからの人生には大きな可能性があったのに!
嫁は息子と三年間付き合って、やっと結ばれたというのに!
一年後には、孫を抱けたかもしれないのに!
しかし、それら全てがあの畜生によって破壊された!
彼は怒り、咆哮した!
唐家の前では無力だった!
彼の抵抗など何の意味があったのか!
しかし今、目の前の男が唐元軒を殺してくれると言うのか?
しかも首を持ってくると!
そんなことがあり得るのか!
この若者は、唐元軒の父親が江南省の名高い唐傲だということを知らないのか!
江南省武道協会会長!
華夏宗師ランキング189位!
江南省で誰が敢えて手を出せるというのか!
「帰りなさい」鐘偉山は首を振った。もう少しで信じるところだった。
その時、葉辰は振り向き、雰囲気が一変し、体から凄まじい殺気が立ち昇った!
その瞳は地獄の深淵のようだった!
まるで万物の上に君臨し、衆生を見下ろすような威厳を放っていた。
これこそが葉辰の本性だった。
「鐘偉山、もう一度聞く!私が唐元軒の首を持ってきたら、雲湖山荘のことを全て話してくれるか!どうだ!」
その声は轟く雷鳴のように、鐘偉山の魂の奥底まで響き渡った!
鐘偉山は体を震わせ、あやうく地面に膝をつきそうになった。血走った目で葉辰をじっと見つめ、言った。「唐元軒さえ死んでくれれば、何でもする!」
「よかろう」
扉が開き、葉辰の姿は完全に消えた。
密室には鐘偉山だけが呆然と立ち尽くし、心臓がドクドクと鳴り響いていた。
……
夜は墨のように黒かった。
冷たい風が死神の足音のように吹き荒れていた!
江南省華泰ホテル、2203号室。
部屋の外には、鋭い眼光を持つ老人が立っていた。
老人の名は唐海沈、唐家の武道の達人で、華夏宗師ランキング251位!若様の唐元軒の安全を担当していた。