しかし、これも当然のことだった。崑崙虚は強者が尊ばれる場所であり、葉辰は実力が強いだけでなく、彼女たち二人の命の恩人でもあった。この二点だけでも、どんな女の子でも心が揺らがないはずがない。
彼女自身も、正直に言えば、心に少なからず動揺を感じていた。
葉辰は狂煞黒虎を一瞥して言った。「お前たちは行っていいぞ。必要な時には、識海の印と交信する」
三頭の狂煞黒虎は葉辰を深く見つめた後、身を翻して森の奥へと向かった。
「行こう」
葉辰は両手を背中で組んで歩き出した。城門では検査があったが、あまり厳しくはなかった。
結局のところ、この殺戮の地には誰でも入る資格があるが、全ての者が生き残れるとは限らないのだ!
中に足を踏み入れると、葉辰は無数の視線が彼らに向けられているのを感じた。
敵意に満ちた。
冷たい。
その中には聖王境の強者も少なくなかった。
「葉さん、私たちの父は万水閣という場所にいます。北へ千メートル行けば着きます。万水閣は父が経営しているんです」
温詩詩が説明した。
葉辰はうなずき、両手を背中で組んだまま北へ向かった。
殺気を帯びた視線は完全に無視された。
これらの者たちはただの小物に過ぎない。もし本当に自分に手を出すつもりなら、この殺戮の地全体を血で染めることも厭わない!
おそらく葉辰から発せられる強烈な殺気と自信のせいで、それらの視線は最終的に消え去った。
万水閣。
三人が到着した時、門は固く閉ざされていた。
温婷婷は眉をひそめ、急いでドアをノックした。「お父さん?」
しかし、ドアはなかなか開かなかった。
彼女があきらめかけた時、突然ドアが開き、中から冷たい声が響いた。「早く入りなさい!」
温婷婷と温詩詩はためらわず、すぐに体を横にして中に入った。
一方、葉辰は別の建物の最上階に視線を向けてから、中に足を踏み入れた。
……
その時、最上階では、長い衣をまとった二人の若者が高みから下を見下ろしていた。
ガラスがあるため、外からはこの二人の若者を見ることはできなかった。
「おや?」
一人の若者が突然口を開き、目には疑問の色が浮かんでいた。
彼は隣の男に向かって言った。「なぜか最後に入ったあの小僧が俺たちに気づいたような気がするんだが」