葉辰は修行していたが、どれくらい経ったのか分からないうちに、周りに異変を感じた。
それは温詩詩だった。
「葉兄さん……ご、ごめんなさい……」
彼女は葉辰を落とそうとしていたが、先ほど熟睡中の行動はすべて無意識だった。
今、彼女の心臓はドキドキと激しく鼓動していた。
隣にいた姉の温婷婷も何か聞こえたのか、うつらうつらしながら温詩詩に言った。「妹よ、葉先生の修行を邪魔しないで」
「うん」蚊の鳴くような声で返事した。
葉辰が答えようとした瞬間、外から大きな音が響いてきた。
窓の外を見ると、その巨大な音の源は洪涛の建物だった!
今、建物の頂上にある虚の鼎から、眩しい赤い光が放たれていた。
「ちょっと出かけてくる」
葉辰は急に立ち上がり、後ろへ向かった。
この建物は師匠に関する唯一の手がかりだ。どんな異変でも、師匠と関係があるかもしれない!
温詩詩は葉辰が去るのを見て、心の中で後悔していた!
さっきのチャンスは絶好だった!
彼女は葉兄さんがきっと頷いて承諾してくれただろうと思い、そうなれば自然と物事が進んだはずだった。
彼女は葉兄さんを利用しようとは思っていなかった。さっきのことはただ一人の少女の最も真実の気持ちだった。
父の指示がなくても、彼女は喜んで従っただろう。
先ほどの光景を思い出すと、温詩詩の心臓は今も狂ったように鼓動していた。
ホテルの外。
葉辰が出てくると、廊下には人でいっぱいだった。これらの人々の気配はさまざまだった。
しかし、みな入聖境以上であることは間違いなかった。
彼らは洪涛の建物の上にある赤い虚の鼎を熱狂的な目で見つめていた!
「洪丹師がまた突破したぞ!今回は丹を練る境地が無上大道に達したに違いない!」
「もう洪丹師なんて呼ぶな!洪丹尊と呼ぶべきだ!今回の突破で、殺戮の地のあの方も彼をより尊敬するだろう」
「それは当然だ。今の洪丹尊の丹を練る術法は無敵だ。殺戮の地だけでなく、崑崙虚全体を見渡しても自信があるだろう。崑崙虚の丹盟のやつらは今頃後悔しているに違いない」
群衆は議論し、ほとんどが驚嘆の声だった。