秦玉は舞踏会など気にしていなかった。ただ顔若雪に会いたかっただけだ。
夜になった。
京都ナンバーのベントレーが玄関に停まった。
顔若雪は窓を下ろし、秦玉に手を振った。
秦玉は急いで小走りで車の前まで来た。
「乗って」顔若雪は目を瞬かせた。
秦玉は車に乗り込み、顔若雪の隣に座った。
暑さのせいか、顔若雪の頬は薄紅く染まり、月明かりの下でより一層魅力的に見えた。
秦玉はそのまま顔若雪を見つめ続け、その姿に見とれてしまった。
「見飽きた?」顔若雪は手を伸ばして秦玉の頭を軽く叩いた。
秦玉はようやく我に返り、照れくさそうに鼻を擦った。
「いい知らせがあるわ」顔若雪が言った。
「どんな知らせ?」秦玉は急いで尋ねた。
顔若雪は笑いながら言った。「最近、沈家の製品は楚州での市場シェアが下がり続けていて、わずか数日で10パーセント近く下落したわ」