会場内は騒がしく、人々の叫び声の中、楊菁はようやく舞台に上がった。
舞台上の楊菁は、確かに光り輝いており、非常に感動的だった。
幸い、秦玉の周りは楊菁の友人ばかりだったので、小魚以外は誰も狂ったように叫ぶことはなかった。
秦玉はこのようなコンサートに興味がなかったので、目を閉じて体内の内勁を感じることにした。
一筋一筋の神識が、秦玉の導きのもと解き放たれていった。
今や秦玉の神識の力は更に強くなり、方悦には及ばないものの、コンサート会場全体を覆うことは容易だった。
「ん?」
すぐに、秦玉はこのコンサート会場内で強大な気配を感じ取った。
「武者までがコンサートを見に来るとは?」秦玉は顎を撫でながら、無意識に後ろを振り返った。
神識の導きに従って、秦玉は遠くを見つめた。
驚いたことに、相手も秦玉を見ていた。
目が合うと、相手は素早く視線を逸らし、舞台の方を見た。
秦玉は眉をわずかに寄せた。
相手は三十歳前後の男で、一見すると平凡な様子だったが、その気配は非常に強烈だった。
秦玉の推測では、相手は少なくとも宗師、あるいは宗師頂点クラスの実力者だろう。
「一体誰なんだ」秦玉は顎を撫でながら、疑問に思った。
しかし秦玉はそれ以上深く考えなかった。たかが宗師一人、彼を傷つけることはできないだろう。
時は矢のように過ぎ、二時間はまたたく間に過ぎ去った。
そして舞台上のコンサートも、終盤に入っていた。
楊菁は舞台上で別れの儀式を行い、下の多くのファンたちは涙を流していた。
傍らの小魚さえも目を真っ赤にして、名残惜しそうな様子だった。
秦玉は白眼を向けて言った。「もういいだろう。会いたければ、またいくらでも機会はある」
小魚は目を擦りながら、もごもごと言った。「あなたには分からないわ」
コンサートは歓声の中で終わった。
終わるや否や、秦玉は急いで小魚の手を引いて帰り支度を始めた。
小魚は名残惜しそうだったが、それでも秦玉に引っ張られて外に出た。
幸い秦玉たちは早めに出たので、さもなければいつまで渋滞に巻き込まれていたか分からない。
小魚を家まで送り届けた後、秦玉は車を運転して自宅へ向かった。
今の秦玉には確かに多くの問題があった。戦区からの招待や古太初の挑発など、頭が痛いことばかりだった。