秦玉は思わず驚いた。
自分が膠着状態を打破する人物なのか?
しかし、今の秦玉は武侯にすらなっていないのに、どうやって京都武道協会と対抗できるというのか?
「武侯になった時の力をよく考えてみろ」と姜和は重々しく言った。
秦玉は突然、以前強引に武侯に踏み込んだ時の状態を思い出した。
あの力は、秦玉に絶対的な自信を与えた。
天下に自分に勝てる者はいないとさえ思えた!
十数人の武侯が相手でも、秦玉は全く眼中になかった!
「お前が武侯になれば、すべてが好転する」と姜和は言った。
「だが気をつけろ。奴らはお前を簡単に武侯にはさせない」
秦玉は深く息を吸い、「姜老前輩、分かりました」と言った。
姜和は頷いて言った。「若者よ、頑張れ」
秦玉は黙り込んだ。
理屈は分かっていたが、今の秦玉の心の中は顔若雪のことでいっぱいだった。
本来なら自分が連れて行くはずだった顔若雪が、なぜ京都武道協会に連れて行かれたのか、理解できなかった。
長老府に戻った秦玉の心は、なかなか落ち着かなかった。
「武侯になれば変化が訪れる...」秦玉は歯を食いしばった。
あれこれ考えたが、心の底では受け入れ難かった。
しかし今の秦玉には他に方法がなく、閣主からの知らせを待つしかなかった。
この一日、秦玉は全く修行する気になれなかった。
翌日。
閣主は人を遣わして京都武道協会に情報を探りに行かせた。
夕方になって、ようやく閣主が長老府にやって来た。
秦玉は慌てて立ち上がり、「閣主様、どうでしたか?」と尋ねた。
閣主は暫く黙り、それから言った。「京都武道協会の機密保持は厳重で、彼らの目的も分からなかった」
秦玉の表情は一層暗くなった!
閣主でさえ何の情報も得られないとは?どうしてこんなことに?
「だめだ!」秦玉は突然立ち上がった。
彼は冷たく言った。「すぐに京都武道協会に行って、事情を確かめなければ!」
閣主は秦玉を一瞥して言った。「お前が京都武道協会に行けば情報が探れると思っているのか?」
秦玉は口を開きかけたが、突然力が抜けたように感じた。
彼はベッドに崩れ落ち、どうすればいいのか分からなくなった。
「お前が武侯になってからにしろ。明日は私が直接京都に行って、もう一度情報を探ってみよう」と閣主は言った。