第630章 苦しむ顔若雪

門口の数体の死体を見て、璩蠍は顔色を変え、額には青筋が浮き出ていた。

「死体を中に運び込め!」璩蠍は激怒して叫んだ。

数人が慌てて手分けして、死体を運び入れた。

監視室にて。

璩蠍は画面に映る黒袍の人を見つめ、表情は一層険しくなった。

「このような手際の良さを見せる者は少ないが...一体何者だ!」璩蠍は怒りを露わにした。

傍らの夏航は口を開きかけ、何か言いたげな様子だった。

「璩会長、この者の目的は、明らかに血脈の力を狙っているのです」夏航は重々しく言った。

「だから...この者は恐らく顔若雪と関係があるのでは」

夏航は必死に考え、璩蠍に暗示を与えようとした。

璩蠍はそれを聞いて、冷たく言った:「まさか...顔永修が雇った者か?」

この言葉を聞いて、夏航は頭が痛くなった。

「それは不可能です。顔永修は今や実権を失っています。もし実権があれば、私たちが彼の娘に手を出すことなど決して許さなかったはずです」夏航は重々しく言った。

「璩会長、囮を使って、密かに待ち伏せするのはいかがでしょうか」この時、傍らの助手が提案した。

璩蠍は暫く黙った後、頷いて言った:「その通りだ。だが...新たな血脈伝承者を作り出すのは、そう簡単ではない」

結局のところ、顔若雪の血液には限りがあり、この期間に蓄えたものは、顔錦尭に渡さねばならなかった。

「適当な人を見つけて、血脈を得たと言えばいいのです。私たちが口を閉ざしていれば、誰も真偽など分かりません」助手は笑って言った。

しかしこの提案は、すぐに夏航に否定された。

「もう少し様子を見るべきです。あの黒袍の人は馬鹿ではありません」夏航は言った。

「こんなに短期間で新たな伝承者が現れたと言っても、あの黒袍の人が信じるはずがありません」

夏航の言葉は、璩蠍の同意を得た。

彼は軽く頷き、言った:「よし、お前の言う通りにしよう」

夏航はほっと胸をなでおろした。

秦玉さえ死んでいれば、自分の娘は救われる、自分も解放されるのだ。

...

黒袍の人の行動は、たちまち大きな波紋を呼んだ。

京都武道協会が厳選した天才たちが、次々と同一人物に殺されるという事実に、人々は震撼した!

たちまち、誰もが黒袍の人の正体を推測し始めた。

「この黒袍の人の実力は、かつての秦玉でも及ばないだろう」