夏航は黒金袍を動かす権限を得た。彼にとって、これはほぼ不可能なことだった。
黒金袍の一人一人が夏航より強く、当然、彼のような名ばかりの副会長よりも地位は遥かに上だった。
しかし夏航は心の中で分かっていた。今回、秦玉を倒すことができれば、大功を立てることができ、潜在的な危険も消すことができるだろう。
...
この一晩中、秦玉は庭に座ったまま眠らなかった。
空高く掛かる月を見上げ、思わずため息をついた。
「私は一体どうすべきなのか...」秦玉は思わず呟いた。
仮面のことを八字髭に話せば、八字髭の経験から、小魚と仮面女の関係を見抜くことができるだろう。
そうなれば、万が一小魚が傷つくことになれば、秦玉の心は絶対に受け入れられない。
しかし、そうしなければ、どうやって顔若雪を救い出せばいいのか?
八字髭は信頼できそうに見えるが、それは利益の誘惑が十分でない場合の話だ。利益が一定の条件に達すれば、何が起こるか誰にも保証できない。
そうして一晩中座り続けた。
夜明けに、秦玉は立ち上がり、歯を食いしばって言った。「小魚、できる限り君の安全を守るよ!」
顔若雪のために、秦玉には他に方法がなかった。
彼は八字髭の部屋に向かい、ドアをノックした。
ドアが開くと、八字髭は目をこすりながら言った。「何だ、本尊はまだ目が覚めていないぞ。」
秦玉は言った。「仮面の行方を知りたいんじゃないのか?教えてやれる。」
「本当か?」八字髭の目が輝き、すぐに目が覚めた。
秦玉は頷いて言った。「だが、まず教えてくれ。この男の死体をどうやって動かすのか。」
八字髭は手を振って言った。「やれやれ、言っただろう。この術法は私にしか使えない。仮面を持ってきてくれれば、必ず君の望みを叶えてやる。」
秦玉は目を細めて言った。「聞くが、この男の死体を動かすには...何か準備が必要なんじゃないのか?」
八字髭は驚いて、つぶやいた。「どうしてそれを知っている?」
秦玉は白眼を向けて言った。「あなたのすることは全て、大量の準備が必要だ。男の死体を動かすのは簡単なことじゃない。当然、準備が必要だろう。」
八字髭は呟いた。「確かにな。それに材料もある程度必要だ。今はまだその材料が揃っていない。」
「よし。」秦玉は頷いた。