第780章 丹方を奪う

秦玉の言葉を聞いて、薛玉芝は淡く笑って言った。「焦ってはいけないことがあるのよ」

そう言って、薛玉芝は入り口の方を見て言った。「何かあれば、外の人に伝えてください」

秦玉はその様子を見て、仕方なく頷くしかなかった。

薛玉芝が去った後、秦玉と八字髭はしばらくここに滞在することになった。

彼は神識を解き放ち、周囲を覆い、薛家には多くの武者がいることを発見した。

しかし、これらの武者は全てが一流というわけではなく、むしろ実力の低い者が多かった。

例えば大宗師、さらには宗師もいた。

「薛家になぜ宗師がいるのだろう?」秦玉は眉をひそめた。

この薛家の上下の実力差は大きく、武侯がいるだけでなく、宗師までいた。

これは全く理にかなっていない。武侯を持つ家族は、決して宗師などを相手にしないはずだ。

もちろん、秦玉もそれ以上は考えなかった。結局のところ、宗師の境地にも天才がいる可能性があるからだ。

あっという間に夜になった。

しかし、薛家からは一向に動きがなく、秦玉に知らせに来る者もいなかった。

これは秦玉を少し焦らせた。

彼は立ち上がって入り口まで行き、外の人に丁寧に尋ねた。「薛おばさんは来られましたか?」

「いいえ」その人は無表情で答えた。

秦玉は不思議そうに言った。「私は薛家のために丹薬を煉丹しに来たのですが、なぜ薛家はずっと動きがないのでしょうか?」

その人は秦玉を一瞥し、嘲笑うように言った。「薛家のために煉丹する者はあなただけではありません。大人しく待っていた方がいいでしょう」

秦玉はようやく理解した。

なるほど、薛家は自分一人だけを招いたわけではなかったのだ。

あの実力の低い宗師の境地の者たちは、おそらく薛家が招いた煉丹師たちなのだろう。

「どうやらこの件は競争になりそうだな」秦玉は顎をなでながら、心の中でつぶやいた。

薬神閣は炎国最高の薬師と煉丹師を集めているが、世界全体を見渡せば、薬神閣だけが独占しているわけではない。

だから薛家が他の薬師を招いたのも、当然のことだった。

「同心丹...この種の丹薬について聞いたことがあるか?」秦玉は八字髭に向かって尋ねた。

八字髭は白い目を向けて言った。「お前が薬師だろう、なぜ俺に聞く?俺は同心丹なんて聞いたことがない」