第889章 秘境へ踏み込む

万古瓊と京都武道協会の他にも、数多くの秘境から武聖が派遣されていた。

彼らの実力は京都武道協会には及ばないものの、顔若雪の血脈があまりにも魅力的だったため、彼らも一か八かの賭けに出ようとしていた。

世界全体が暗く沈み、大きな戦いの予感が漂っていた。

その時、秦玉は必死に車を走らせ、薬神閣へと向かっていた。

しばらくして、秦玉はようやく薬神閣に到着した。

彼は閣主の手を引き、すぐに立ち去ろうとした。

しかし閣主は足を止め、重々しく言った。「秦玉、何をするつもり？」

秦玉は焦りながら言った。「早く行きましょう。武聖が現れました。あなたは私と一緒に秘境に隠れなければなりません！」

「隠れる？」閣主は思わず笑い出した。

「私がなぜ隠れる必要があるの？」

秦玉は焦った表情で言った。「彼らが私を見つけられなければ、必ずあなたを探しに来ます！あなたに何かあってほしくないんです！」

閣主はそれを聞いて、さらに笑みを深めた。

彼女は秦玉の手を振り払い、広大な薬神閣を見渡しながら言った。「私が去ったら、薬神閣はどうなる？私を信頼している多くの薬師たちは、どうすればいいの？」

秦玉はその場で呆然とした。

そうだ、閣主がいなければ、薬神閣は崩壊してしまう。

「人は生きている以上、責任があるものよ」閣主は静かに言った。

秦玉もようやく冷静さを取り戻した。

彼は閣主を見つめ、眉をひそめて言った。「では、どうするんですか？」

閣主は淡々と言った。「心配しないで、私は大丈夫よ。彼らが探しているのは私じゃなくて、あなたなのだから」

秦玉は口を開きかけたが、閣主は手を振って遮った。「時間を無駄にしないで、さもないと間に合わなくなるわ」

時間が迫っていることは、秦玉も分かっていた。

彼は歯を食いしばって言った。「閣主、どうかお気をつけて」

そう言うと、秦玉は車に戻り、来た道を引き返した。

この道中、秦玉の心は重かった。

武聖が現れる時期は、秦玉の予想をはるかに超えていた。

そのため、秦玉は身近な人々を適切に避難させる時間がなかった。

閣主の他にも、碧月山荘の多くの人々がいた。