理由をつけてメイドをしばらく下がらせた。オードリーは後ろ手に部屋のドアをロックして振り向き、自分のことをペットだと思っているのか分からないゴールデンレトリバーのスージーに話しかけた。
「何かを聞いたか、ええと、それとも何かあったの?」
ゴールデンレトリバーのスージーは落ち着いてお座りし、ワオーンと一声鳴いて、周囲の空気を震わせて話し出した。
「うん、書斎で伯爵と何人かの議員が相談しているのを聞いたよ。国王と首相の意見が一致して、しばらくの間はバラム東海岸でフサルク帝国に報復する計画はあきらめるって言ってた。バラム東海岸ってどこ?」
スージーが驚くほどのスピードでルーン語をマスターしていることを知り、オードリーはますます複雑な気持ちになり、数秒間沈黙してから言った。「明日貴女に地図を1枚あげるわ……」
「分かった~」スージーはうれしそうに答えた。「国王と首相は今一番重要なのは以前のあの改革計画を進めることだと思ってるんだって。公開の試験で政府の職員を決定する計画だよ。10月より前に上院と下院を通過させたいって。」
「本当?」オードリーはうれしくなって聞き返した。
これは彼女が「観衆」になってから、自分の能力を使ってひそかに導いた初めての事で、もしも現実になったら、彼女は達成感で満たされるだろう!
スージーはいたって真面目に答えた。「私は確かな答えはあげられない。私は聞いただけだし、もっと言えばそれがどういう意味かも深くは分からないの。だって私は勉強を始めたばかりの犬だもの。」
「……」オードリーはしばらくあっけにとられていたが、すぐに笑顔になり言った。「スージー、貴女本当にすごいわ!これはごほうびよ!」
彼女は豪華な装飾が施されたキャビネットから袋を1つ取り出し、口を開け、スージーの目の前に置いた。
それは「ベークランドペット愛護会社」が小麦粉、野菜、肉類と水で作った犬用のビスケットで、スージーが大好きなおやつだ。
行儀よくお座りしたスージーは鼻を動かし、片足を上げてみた、まるでどうやって食べるのが今の自分にふさわしいのかを考えているかのようだった。