寺田凛奈はマスク、ゴーグル、手術帽をつけて、頭から足先まで隙間なく包まれており、顔の様子はまったく見えなかった。
だから、誰も彼女の唇の端に浮かんだ嘲笑的な笑みに気づかなかった。
彼女は本当に、この妹がこれほど厚かましいとは思わなかった。
以前なら、少しは顔を立ててやろうと考えたかもしれないが、今は——
寺田凛奈は突然笑って言った。「ああ、あなたが寺田凛奈なんですね?」
彼女は意図的に声を低くし、もともと低めの声がさらに低くなり、喉が潰れたようだった。
しかし、この言葉が出た瞬間、手術室全体が静まり返った。福山部長を含む数人全員が、寺田佐理菜を見つめた。
寺田佐理菜の笑顔が凍りつき、額に冷や汗が浮かんだ。
あのデブがメールに署名までしたのか?
福山部長の表情が曇った。「寺田佐理菜、これはどういうことだ?」