第55章 あなたの息子は私の息子

渡辺光春は大学で漢方医学製薬を専攻し、渡辺由佳に丹精込めて育てられ、将来は安平堂を引き継ぐ予定だった。

そのため、彼女は薬品について少し研究していた。

彼女は黒っぽい薬丸を手に取り、注意深く嗅いでみると、爽やかな香りが鼻をくすぐり、瞬時に頭がすっきりとした感覚に包まれた。

まるで高原地帯で酸素を吸ったかのように心地よかった。

渡辺光春の美しい顔が真剣な表情に変わり、その薬丸を凝視して詳しく調べた。

石丸和久の穏やかな顔に戸惑いの色が浮かんだ。「どうしたの?」

渡辺光春は首を振り、躊躇いの表情を見せた。「おばあちゃん、この薬丸を私にくれませんか?持ち帰って研究して、確認したいんです!」

渡辺老夫人はうなずいた。「いいわよ、一つ持って行きなさい」

渡辺光春は宝物でも見つけたかのように、慎重にその薬丸を袋に入れ、階下の実験室へと急いだ。