物業?
物業は毎年挨拶に来るけど、大体夜だよね。昼間に来て邪魔するわけないでしょ?
それに、もうすぐ12時になるのに、寺田さんはまだ来ないの?
もしかして、来る気がないのかな?
この考えが頭をよぎると、藤本凜人の胸の内に急に苛立ちが湧き上がった。彼は突然立ち上がり、細長い目で玄関をじっと見つめ、目尻の涙ぼくろには冷たさと不満が滲んでいた。
彼のその様子を見て、藤本悠佑はスマホでキングオブグローリーをしながら尋ねた。「兄さん、誰か待ってるの?」
藤本凜人は考えもせずに否定した。「いいや」
自分が女に近づく機会を与えたのに、彼女がその機会を掴まなかったのは彼女の損失だ。自分には何の関係もない。
明らかにあの女が自分に惚れているのに、どうして今、不安になっているのは自分なんだ?