第33章 彼は知った!

寺田凛奈も思いがけず、ここで患者の家族に出会うとは思わなかった。相手の慈悲深い顔に感謝の情が浮かぶのを見て、彼女はゆっくりと言った。「親族を見舞いに来ました」

倉田健祐は躊躇いながら一歩前に出て、不確かに尋ねた。「渡辺奥様、これは...」

渡辺奥様は笑いながら紹介した。「倉田さん、もう大丈夫よ!この方が昨日の緊急事態で、私の夫を救ってくださった恩人なの!」

倉田健祐は驚いて寺田凛奈に尋ねた。「あなたはいじゅつができるのですか?」

寺田凛奈は眉を上げた。倉田健祐は昨日の彼女の言葉を気に留めていなかったようだ。

三人が話している間、病室で外の声を聞いた藤本凜人が出てきて、寺田凛奈を見ると、彼の表情が一瞬止まった。「君が渡辺おじさんを救ったのか?」

彼は寺田凛奈を見つめる目が突然深く測り難くなり、まるで見透かされているような感覚を与えた。