松川文弥は来る途中で、すでに調査を済ませていた。
あの寺田芽は、自分のママが寺田凛奈で、パパが藤本凜人だと言っていた。最初は寺田凛奈が藤本凜人が外の噂を防ぐための道具人に過ぎないと思っていたが、寺田凛奈が婚約者を救いに行った時、藤本凜人が彼女のために出てきたとは思いもよらなかった。
彼女の美しい顔を思い出し、松川文弥はおおよそ理解した。寺田凛奈は恐らく藤本凜人の愛人なのだろう。
藤本凜人がなぜ自分の愛人に婚約者がいることを許すのかはよくわからなかったが、今はそれらは重要ではない。
重要なのは、必ず瀬戸門に自分のために出てきてもらうことだ。
さもなければ、これからの業界で彼松川文弥はどうやって生きていけばいいのか?
彼は武道場に入る勇気がなく、外に立っているだけで、涙と鼻水を垂らしていた。