寺田凛奈が電話を切ろうとしたとき、佐竹璃与がまた口を開いた。「息子も連れてきてね!」
寺田凛奈は少し考えてから、頷いた。「わかった」
彼女は階段を上がって藤本建吾を連れて車に乗った。「友達に会いに行くわ」
藤本建吾はとても興奮した。「やった!」
ママと再会してからずいぶん経つのに、ママの友達はまだほとんど知らない。藤本建吾はママが普段何をしているのか、この謎めいた状況について知りたかった。
ママは毎日寝てばかりなのに、なぜそんなにお金があるんだろう!
ただの名医では、そんなにたくさんのお金は稼げないはずだ!
彼は興奮して車に乗り、後部座席に座った。
寺田凛奈が運転席に向かう途中、まだぼんやりしている石丸和久を見て、ゆっくりと言った。「おばさん、このことは当分の間...秘密にしておいてください」
石丸和久は「...はい」と答えた。
寺田凛奈が去った後、石丸和久はリビングに入った。午後ずっと待っていた緊張した渡辺老夫人がすぐに前に出て、彼女の手を握った。「和久、どうだった?藤本奥様は何か言ってた?」
石丸和久は呆然として「何も」と答えた。
渡辺老夫人はほっとした。「それならいいわ。ああ、彼女が何か言い出すんじゃないかと心配だったのよ。建吾の実の母親側が親戚として付き合おうとしたら、その時藤本凜人はどっちを贔屓するの?凛奈側?それともあっち側?」
石丸和久は「...」
彼女は言いかけてやめ、渡辺老夫人を見てから、やっと口を開いた。「実は、どっちも同じなんです」
渡辺老夫人は彼女を一瞥した。「そこがわからないのね。同じじゃないのよ。それに、そうなったら建吾の実の母親側が、きっと凛奈に何か問題を引き起こすわ。それに建吾の方も、凛奈に育てられたのに、凛奈を恨むようになったらどうするの?こういうことは、前もってはっきりさせておかないといけないのよ。ああ、他人の子供がいるって、本当に面倒ね」
「...」
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京都郊外の別荘で。
福山さんと佐竹璃与は楽しそうに夕食の準備をしていた。
佐竹璃与の気分は上々で、口ずさみながら、少女のように軽やかな体で、ダイニングテーブルとキッチンの間を行ったり来たりしていた。