第172章 発見

寺田健亮はここ数年、揚城でも違法なビジネスに手を染めていた。最終的には損をしたが、違法行為の事実は残っている。

富樫和恵が本当にそれを持ち出したら、寺田健亮は刑務所行きだ!

寺田健亮は震え上がった。

富樫和恵はさらに言った。「夫婦の仲だったんだから、何も残さなかったと責めないでね。スーツケースの左側のポケットに小さな袋があるわ。中にはあなたの身分証明書と200万円が入っているわ。これまでの何年間かの情を全うしたってことにしておくわ」

寺田健亮は焦った。彼は携帯電話に向かって叫んだ。「富樫和恵!降りてこい、飛行機から降りろ!会いたい、俺を置いていくな!」

彼は目が赤くなり、突然心の底から慌てふためいた。

人生の半ばにさしかかって、こんな風に誰からも見放される結果になるとは思わなかった……

彼は携帯電話に向かって嗚咽しながら言った。「和恵、和恵、俺が悪かった。若い頃に間違いを犯すべきじゃなかった。本当に悪かったと分かったんだ。戻ってきてくれ、戻ってきてくれ!」

富樫和恵の声は静かだったが、決意に満ちていた。「寺田健亮、飛行機が離陸するわ。さようなら」

この言葉を残して、彼女は電話を切った。

寺田健亮は携帯電話を見つめ、必死に折り返し電話をかけたが、電話の中からは「お客様のおかけになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かない場所にあります」というメッセージが流れるだけだった。

寺田健亮は急いで隣に駆け寄り、ガラス窓越しに揚城行きの飛行機が離陸するのを見た……

彼はガラスを突き破って、その飛行機に飛び込みたかった!

富樫和恵は長年彼の世話をし、家庭のすべてを取り仕切っていた。寺田健亮はずっと、この女性は自分を愛しているのだと思っていた。

結局のところ、若い頃、彼が渡辺詩乃との約束を交わした時、実際には彼女がいたのだ。しかし、栄華富貴のために、彼は富樫和恵に待つように言った。

渡辺詩乃は、彼女は恋人がいる人とは付き合わないと言っていた。相手の人生を台無しにするのが怖いからだと。

だから彼は富樫和恵の存在について一切口にしなかった。

しかし今、富樫和恵は彼を見捨てた……

これは物質的な放棄だけでなく、精神的な裏切りでもあった!