第145章 木田柚凪……ママ???

高級VIP病室は入院棟の最上階にあり、エレベーターホールが使用中だったため、木田柚凪は急いで階段を使うことにした。そのため、寺田真治に出くわすとは思ってもみなかった。

一方、寺田真治は急用があって階下に行く必要があり、同じく階段を使っていた。

今、寺田真治は上に立ち、木田柚凪を見下ろし、木田柚凪は下に立ち、彼を見上げていた。

二人は目が合い、しばらくの間言葉を交わさなかった。

木田柚凪は急いでここまで来たが、芽が重病にかかっていないかと心配だった。今、寺田真治のあの馴染みの顔を見て、心の中の悔しさが思わず増してしまい、瞬く間に目が赤くなった。

5年前、彼女はこの男性を自分の支えにすることができた。

5年後、この男性は既に別の女性の支えになっていた。

この考えが、木田柚凪の溢れそうになった涙を押し戻させた。彼女は目を伏せ、寺田真治を避けて階段を上がろうとした。