第235章 この花を、捨てよう

寺田凛奈は眉を上げた。

  彼女のこの別人格は実際、突然現れたものだった。

  海外にいた時、寺田芽が偶然ある花木のウェブサイトを開き、そこに斑点だらけの蘭の写真を指さして病気を治してほしいと言ったときに登録したものだった。

  当時寺田芽はまだ3歳で、花に色むらができるのは、人の皮膚にシミができるのと同じように病気だと思っていた。

  彼女がちらっと見たところ、本当に花が病気になっていることがわかり、いくつかの漢方薬を使って治療する必要があった。

  暇つぶしに、彼女は技術の腕がうずいて、その投稿にコメントを残し、漢方薬の処方を送り、1日1回花に薬を噴霧すれば、1週間後には改善すると伝えた。

  当時、返信するにはアカウント登録が必要だったので、彼女は適当に松野という名前で登録した。蘭の花を再び若々しく輝かせるという意味だ!

  彼女はメッセージを送った後、そのまま放っておいた。

  思いがけないことに1週間後、その投稿の主が現れ、松野は本当に栽培の達人だ、なんと彼女の問題を解決してくれたと言った!

  その後、蘭の愛好家たちが次々と彼女に助けを求めてきた。

  彼女は時々それを見かけて、気分が良ければ手伝っていた。

  こうして、毎回蘭の病気を見てもらうと本当に効果があり、徐々に蘭の世界で彼女は有名になっていった。

  しかし、このように堂々と金銭で彼女の処方を買おうとするのは初めてだった。

  彼女はウェブサイトのプライベートメッセージを開き、相手が送ってきたその鉢植えの花を見た。花には小さな虫がついていたが、この種の蘭はデリケートで、ちょっと触れただけでも傷んでしまう。殺虫剤をかけるのは絶対にダメで、花も虫も一緒に死んでしまうだろう。

  寺田凛奈は眉を上げた。

  この鉢植えの花が300万円の価値があるとは思えない。そして、これは珍しい品種でもない。この人が300万円で治療法を買おうとしているなんて、本当に頭がおかしい。新しい鉢を買い直した方がましだ。

  彼女はすぐにプライベートメッセージを閉じ、ベッドに横たわって休んだ。

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  郊外の別荘で。