第272章 誕生日プレゼント

「……」

「……」

「……」

宴会場全体が静まり返り、全員が信じられない様子で彼らを見つめた。

石丸和久と渡辺光春は、藤本さんがこのような場で二人の関係を明かすとは全く予想していなかった。

正直なところ、30年前から渡辺家は藤本家に及ばなくなっていた。渡辺詩乃が世間の注目を集めたのは、彼女自身が十分に優秀で、藤本家や寺田家が彼女を娶ることを誇りに思えるほどだったからだ。

しかし今の渡辺家は没落した名家に過ぎず、しかもさっきのような状況で……石丸和久と渡辺光春は目を合わせた。

渡辺光春は石丸和久に近寄り、小声で話し始めた。「お母さん、藤本さんは凛奈姉さんのことを本気で考えているわ」

本気でないわけがない。

二人の子供の母親なのだから!

石丸和久は自分の子供を過小評価したことはなかった。彼女は口を開いた。「でも、凛奈がちょっと不満そうに見えるわね」

渡辺光春も彼女の視線の先を見た。寺田凛奈が眉をひそめているのが見えた。

確かに、彼女は少し不満そうだった。

幼い頃から控えめに生きてきた人間は、人々の注目を集めることを望まない。藤本凜人の彼女になり、さらには将来の藤本夫人になることで、確実に注目されることになる。

もちろん、これも彼女が藤本凜人を遠ざけ、彼に感情を抱かないようにしてきた理由だった。

しかし、この男は公の場で二人の関係を公表したのか?

彼女の同意を得たのだろうか?

しかし、一度口に出した言葉は、こぼれた水のように取り戻すことはできない。彼女は眉をひそめ、どうやって無事に切り抜けるかを考えていた。

彼女の不満を察したのか、藤本凜人は頭を下げ、説明するような、あるいは言い訳をするような口調で言った。「凛奈、さっきの彼らの態度がひどすぎて、つい我慢できずに僕たちの関係を言ってしまったんだ。気にしないよね?」

寺田凛奈:?

思わず口を滑らせた?

本当に彼の言葉を信じると思っているのか?

この男が何かをぐっと我慢したと言えば信じるが、衝動的に何かをしたと言われても絶対に信じない!

藤本家の権力者であり、日本第一の名家のリーダーである彼が「衝動的に」行動する?