第334章 武徳なし

他の人々は即座に拳を握りしめた。

  小坂門と瀬戸門は武林において常に尊敬される存在だった。特にここ数年、平和な時代の中で武林が弱体化し、みんなが普通の生活に戻っていく中で。

  小坂門と瀬戸門はむしろ武林の人々の精神的な支えとなっていた。

  大師兄と大師姉の実力を疑問視する人もいたが、10年前、小坂大師兄が圧倒的な優位で、わずか15歳の若さで優勝し、全ての人々の口を封じた。

  そして、小坂門と瀬戸門がある限り、武林は存続すると皆に理解させた。

  そのため、人々は大師兄と大師姉に対して、アイドル的な憧れを抱いていた。これが武林大会で、大師兄と大師姉との写真撮影を求める人が多い理由でもあった。

  今、辻本凌也がいきなり二人に挑発的な態度をとったので、全ての人が怒りの目で彼らを見つめた。