寺田洵太は呆然として、信じられない様子で彼女を見つめ、喉を鳴らして言った。「り、凛奈、冗談言わないでよ。」
寺田凛奈は彼をちらりと見て言った。「出て行って。」
寺田洵太は素直に車から降りた。車内を見る勇気はなかった。たとえ車のガラスが一方向からしか見えないものだったとしても、内側から外は見えるが、外から内側は見えない。
1分後、車のドアが開いた。彼は寺田凛奈が赤い派手なドレスを着て降りてくるのを見た。そして、あのマスクをつけた。
目の前の人が突然変わったようだった。
田舎者の従妹から、神秘的で測り知れない大師姉に。
寺田洵太は「……」
彼は今日、自分の目の覚め方が間違っていたに違いないと思った!
こんなことがあり得るはずがない!
寺田真治が寺田凛奈の正体を疑い始めた時から、ずっと彼女のそばにいたのに、こんなに長い間、彼女が大師姉だったなんて気づかなかったなんて!