寺田凛奈が失神した後、寺田芽は安心感を失った。
お父さんと一緒に藤本家にいるのはもう嫌だ。どんなことがあっても、寺田凛奈のそばにいなければならない。甘えたり、可愛らしく振る舞ったり、最後には寺田家の床に転がって駄々をこねたりして、どうしても藤本凜人についていくのを拒んだ。
藤本建吾も黙っていて、黙って彼を見つめていた。その意味は明らかだった。
ママが目覚めるまで、私も行かない!
結局、藤本凜人は仕方なく、寺田真治に申請して、一時的に寺田家に客室を設けてもらい、ここで仕事をしながら二人の子供たちを見守ることができるようにした。
寺田真治が管理人からの電話を受けたとき、口角をピクリと動かした。
この藤本凜人め、腹黒さが極まっている。
彼には信じられなかった。藤本凜人がどうして一人の子供を扱えないのか?それに、本当に扱えないとしても、家に藤本坊ちゃまが寺田家で遊んでいると一言言えばいいじゃないか?
それに!
藤本凜人は藤本家の当主として、行動を報告する必要なんてないだろう!
彼はまだ覚えている、藤本建吾が以前藤本凜人と外の別荘に住んでいたことを。
しかし管理人は藤本凜人を断る勇気がなく、寺田真治が知ったときには、藤本凜人はすでに引っ越してきていた。
まさに子供を利用して、厚かましさの極みだ!
まだ結婚もしていないのに、一緒に住むなんてどういうことだ!
彼は今回帰ってきたのも、藤本凜人を追い出すつもりだった。
しかし今、寺田芽は両足を組んでソファに座り、全力で人をからかうモードを発動していた。
彼女の後ろには、内管理人と外管理人が立っていて、彼女を見ていた:
「お嬢様、ゲームがお上手ですね!」
「この罵り方、とても芸術的ですね!」
「えっ?そんな罵り方もあるんですか?シェイクスピアから『スピア』を取ったら『シェイク』になるんですね!ハハハ……」
二人とも明らかに寺田芽の小さなファンになっていた。
藤本凜人も隣のソファに座り、何か書類を処理しているようだった。その悠々とした様子は、まるで寺田家を自分の家のようにしていた!
寺田真治は口角をピクリと動かした。