第619章 本音を明かす

入江冬月の言葉は、彼にはほぼはっきりと聞こえていた。

しかし相手の言葉は、ノイズだらけだった。

明らかに、相手側にも優秀なハッカーがいて、自分の信号を直接ブロックし、入江冬月だけが相手の声を聞くことができた。

倉田健祐は眉をひそめ、盗聴器を置いて、直接入江冬月の前に行き、彼女の携帯電話のスピーカーをオンにした。

入江冬月は電話をかける時、もちろんそのことを知っていたので、安心して入江和夜に電話をかけることができた。彼が何を言っても心配はなかった。結局のところ、入江和夜の携帯電話は特別な処理がされており、誰も彼の声を盗聴することはできなかった。

しかし倉田健祐がこんなにも露骨にスピーカーをオンにしたので、彼女は直接口を開いた:「和夜、いい子にして、早く日本に来て。約束するわ、帰ったら、もうあなたのウサギたちには手を出さないから!」

入江和夜はその言葉を聞いて、突然声を高くした:「本当?」

幼い頃から地下室で育った入江和夜は、外出を許されたことがなく、父親が付き添って多くの知識を教え、オンラインで授業を受け、独学で成長することしかできなかった。

そして父親は時々忙しく、彼はそこで一人で過ごすしかなかった。

あのウサギたち、猫たち、犬たちは、何年も彼の最も親密な友達だった。しかし、それらの友達は、大人たちの実験道具だった。

入江和夜はそのことに非常に不満だった。

しかし、どうやって反抗すればいいのかわからなかった。幼い頃からそこで育った彼は、反抗できることさえ知らなかった。ただウサギたちを生かし、仲間たちを生かしたかっただけだった。

だから、臓器移植ができるなら、彼は喜んでそうしたかった!

彼の世界には、生と死しかなく、正しいも間違いもなかった!

犬の頭を猫の体に縫い付けることが、自然科学に著しく違反し、人類の価値観にも反していたとしても、彼にとっては、犬6号を生かすことができれば、それが何よりも重要だった。

入江冬月は頷いた:「そう!」

入江和夜は少し躊躇してから、やっと口を開いた:「じゃあ、いいよ。」

入江冬月はほっとした:「早く来てね!」

「わかったわかった、うるさいなあ!」

入江和夜はそう言って、電話を切った。