部屋には不気味な静けさが漂っていた。
長い間黙っていた老いぼれが突然口を開いた。「私は、顔を洗って頭を冷やしてきます。」
まるで先ほどまでの時間では、まだ気持ちを落ち着かせることができなかったかのようだった。
彼はぼんやりと病室の洗面所に入り、蛇口をひねって、冷たい水を手ですくって顔にかけた。
彼が狂っていた二十年余りの間に、お嬢様はこんなにも優秀になられたのか。
奥様がご存命なら、きっと喜んでいただろう。
外では、寺田凛奈が蛇口をひねる音を聞いていた。水の流れる音の中で、老いぼれのため息が聞こえたような気がした。
一分後、水の音は続いていた。
寺田凛奈は何かを察知したかのように、急に立ち上がって洗面所に駆け込んだ。しかし、洗面所の窓は大きく開かれ、老いぼれの姿はすでに消えていた!