それは芽の声だった。
藤本凜人は急いで駆け寄り、ドアを開けると、寺田芽が慌てて飛び込んできて、寺田凛奈の手を引っ張って階下へ向かった。声には涙が混じっていた。「ママ、早く来て!たろうが危ないの!」
たろう?
寺田凛奈は眉をひそめ、何かを悟ったように、芽の前を走って階下へ向かった。
階下に着くと、執事が近づいてきた。「坊ちゃまとたろうは休憩室におります。パニックを避けるため、警備員に移動させていただきました。」
寺田凛奈は執事に頷いた。
この執事は藤本凜人の部下で、仕事の能力は一流だし、彼女にもいつも丁寧だった。
それを聞いて、凛奈は休憩室へ駆け込んだ。入るなり、藤本建吾の声が聞こえた。「僕のママは、君のママでもあるんだよ。医者なんだ。きっとたろうを治してくれるから、大丈夫だよ。」