三ヶ月の時間……
入江桂奈の目的は、やはりこれだった。
寺田凛奈は手にしたV15薬剤を見つめ、この瞬間、和夜に注射すべきかどうか迷っていた。
注射しなければ、十日後に彼は死ぬ。
注射すれば、彼はこの薬剤にさらに支配されることになる。
寺田凛奈は目を伏せた。
藤本凜人が出てきて、彼女の肩に手を置き、言った。「和夜の熱は下がったよ。心配いらない」
寺田凛奈がいれば、入江和夜は熱を出しても何の問題もないはずだった。
寺田凛奈は頷いた。
その時、執事が突然近づいてきて、二人を見つめ、黙り込んでしまい、どう報告すべきか一瞬迷っていた。
寺田凛奈は尋ねた。「どうしたの?」
執事はため息をついた。「若様のペットの中で、一匹の猫が、もうダメそうです」
「……」
寺田凛奈は階下の部屋に向かった。藤本家の藤本奥様は特別にペットを飼っていたので、家にはペットの世話ができる人がいて、入江和夜の十数匹のペットたちを大切に世話していた。
他のペットたちは元気そうだったが、明らかに怯えている様子で、隅っこに縮こまっていた。しかし、その中の一匹の猫は、元気なく地面に伏せており、まぶたを垂れ下げ、明らかにもうダメそうだった。
寺田凛奈はそれを見つめた。
携帯がまた一度鳴った。入江桂奈からだった。「ああ、猫十三も、この二日のうちにダメになるわね。あのペットたちは全てV15を注射されている。あとはV16だけよ」
寺田凛奈は顎を引き締めた。
藤本凜人は目を細めた。「奴は私たちに、動物たちが一匹ずつ死んでいくのを見せつけ、なすすべもなく、和夜のためにV16を探すしかないようにしているんだ!」
入江桂奈のやり方は本当に残酷極まりなかった。
彼は二人が簡単には操られない人間だと知っていたからこそ、このような決断を下したのだ。おそらく、二人は入江和夜が死ぬとは信じていないし、渡辺詩乃が残したV16を探す際も、真剣に取り組まないかもしれない。あるいは、深刻さに気付く前に、入江和夜が突然死んでしまうかもしれない。
だから、彼は表向きは善意で入江和夜の友達たちを全て送り届け、子供を喜ばせた。しかし、その裏の目的は、二人に彼らが一匹ずつ死んでいくのを目の当たりにさせ、切迫感を高めることだった。
そう。
切迫感。
寺田凛奈は今まさに切迫感を感じていた。