寺田凛奈は藤本建吾の言葉を聞いて、「なぜ?」と尋ねた。
藤本建吾は再び密かに二階を見上げ、そして寺田凛奈の足にしがみついている寺田芽を見て、咳払いをした。
寺田凛奈が話す前に、寺田芽が甘えた声で口を開いた。「お兄ちゃん、私は行かないよ。一緒に聞きたいの!」
「……」
藤本建吾は仕方なく、静かにため息をつき、もう一度二階を見上げてから、ようやく話し始めた。「実は、和夜が目覚めたばかりの時、他人の会話を聞いてしまったんです。」
入江和夜が目覚めた時、知能がさらに高くなり、より敏感になっていた。
幼い子供は、小さい頃から両親がそばにいなかった。この家に戻ってきたばかりだが、使用人たちが自分を好ましく思っていないことも感じ取れた。
以前はあまりにも手に負えない子供だったからだ。