第739章 藤本凜人は金欠?

その日、京都郊外にある寺田凛奈の別荘は、甘美で艶やかな雰囲気に包まれていた。

藤本さんは満腹で、寺田凛奈を抱きしめながら、指で彼女の背中を優しく撫でていた。その表情には、かつてないほどの満足感が浮かんでいた。

漆黒の瞳は深遠で、まるで星空を覗き込むかのように深く、誰も直視できないほどだった。男は掠れた声で尋ねた。「凛奈、眠いか?」

寺田凛奈は少し疲れていたが、珍しく眠くはなかった。彼女は藤本凜人を押しのけて起き上がると、シーツが白い肌から滑り落ちた。

彼女の肌は白く、体のあちこちについた痕跡やキスマークが目立って、まるで虐待されたかのように見えた。

藤本凜人はそれを見て、瞳がさらに深くなった。

しかし寺田凛奈はすぐに服を羽織り、黒髪を後ろに掻き上げてから言った。「眠くないわ。帰りましょう」

藤本凜人は静かにため息をつき、ベッドの背もたれに寄りかかった。今、一服したい気分だったが、医者である寺田凛奈がタバコの匂いを特に嫌うことは分かっていたので我慢した。「帰りたくない」

寺田凛奈は彼を無視して、服を着続けた。着終わると外に向かって歩き出した。「じゃあ、私が先に帰るわ。あなたは後で帰って」

藤本凜人:「……」

まるで二人は地下恋愛でもしているかのように、時間をずらして帰宅する必要があるのか?疑われないように?

彼は口角を引き攣らせながら、シーツをめくって立ち上がった。

寺田凛奈はすでに手際よく服を着て、外に向かって歩き出したが、足がまだ少し震えていた。

先ほどの体位を思い出し、深いため息をついた。これからはもっと運動しないといけないわね、サボってはダメだわ。こんなに疲れるなんて思わなかった!

一方、藤本凜人を見ると、瀬戸さんが言っていた通り毎日トレーニングをしているだけあって、明らかに彼女より体力があった。

先ほど彼も体力を消耗したはずなのに、まるで何事もなかったかのように元気そうだった。

寺田凛奈はそのことを考えて、口を尖らせた。

まさか夫婦で内輪で競争することになるのだろうか?

彼女は静かにため息をつき、足を速めた。ここに留まれば、30分睡眠を削って30分運動を増やそうという考えが浮かびそうで怖かった。