第745話 完勝?

藤本修也のこの一手は、藤本凜人の気迫を抑え込もうとするものだった。

取締役会で指導者が最後に到着することは全く問題ないのに、彼は「おじさま方」という言葉を使って、出席者全員が自分より年上で敬意を払うべきだと示した。

藤本凜人が謝罪を拒否すれば、非常に無礼に見えてしまう。

しかし、謝罪すれば、入室時の威厳が失われてしまう。

藤本修也の一言で、藤本凜人は受け身の立場に追い込まれた。

寺田凛奈はスマートフォンを見つめ、この男がどうするか知りたかった。しかし、皆が彼を見つめる中、彼の視線は突然カメラに向けられ、画面を見つめていた。

まるで画面越しに、寺田凛奈の顔を見つめているかのように!

寺田凛奈:「……」

この男はそんなに敏感なの?

ただのカメラなのに、気づいたの?

いや違う……

Yが作ったファイアウォールを彼女が破ったのに、彼が知らないはずがない。それに、寺田凛奈が侵入した時に全く障害がなかったということは、この男が手加減していたということ?

まるで彼女のその考えを裏付けるかのように、彼は淡々と口を開いた:「ええ、外で家内の用事を済ませていたので遅れました。皆様、どうかご容赦ください。」

寺田凛奈:!!

彼女の頬が一気に赤くなった。くそっ!

家内って何よ!

誰があなたの家内よ?

二人はまだ結婚してないのに!

寺田凛奈は口角を引きつらせ、スマートフォンを投げ出したい衝動に駆られた。

でも、彼女は好奇心が抑えられなかった。謝罪したら威厳が失われるんじゃないの?

そこで、スマートフォンを手放すことができなかった。

すると次の瞬間、彼の次の言葉が聞こえてきた:「しかし、会社では制度が重要です。私たちは家族経営ですが、どれだけの家族経営が内紛で崩壊したでしょうか?だからこそ、藤本グループは祖父の時代から、縁故主義を絶対に採用しないという規則を設けました。会社内では、血縁関係ではなく、能力のみを重視します。」

言い終わると、彼は姿勢を正した:「皆様、今はあらゆる関係を脇に置き、会社内では会長と社長の関係のみとしましょう!」

彼がこれらの言葉を述べる時の態度は依然として淡々としていたが、その発言は軽視できないものだった。

一瞬にして、威厳が戻ってきた。

会議室内の全員が一斉に声を上げた:「はい、藤本社長!」

藤本修也:「……」