寺田凛奈は急いで車を運転して家に帰り、会社からの次のプロジェクト書類を抱えて車から降りると、直接書斎へ向かった。
プロジェクト書類を机の上に置くと、彼女は携帯電話を手に取り、あたりを見回してから藤本凜人の番号に電話をかけた。
事件が起きてから今まで、これが彼女が初めて彼に連絡を取ろうとした時だった。
しかし電話をかけると、相手側からは「お客様のお掛けになった電話番号は、現在使われておりません」というアナウンスが流れた。
そうだ、あの携帯電話は爆発で壊れてしまったのだ。結局、遺体の近くから藤本凜人の持ち物が見つかっていた。
だからこの番号に連絡が取れないのは当然のことだった。
寺田凛奈は思わず、藤本凜人は一体どこへ行ってしまったのだろうかと考え始めた。
彼女が考え事をしているところに、部屋のドアが開き、三人の子供たちの頭が順番にドア口に現れた。寺田芽は大きな目をパチパチさせながら、甘えた声で言った。「ママ、パパのこと考えてるの?」
寺田凛奈:「...まあね」
藤本建吾はそれを聞いて言った。「ママ、前に言ってたでしょ?パパは用事があって出かけただけで、しばらくしたら帰ってくるって」
寺田凛奈は顎に手を当てて、「でもこんなに仕事が多くて、私も頭が痛いわ」
入江和夜はすぐに首を伸ばして見回し、そして言った。「こんなに仕事が多いの?誰かが手伝ってくれたらいいのに」
寺田芽はすぐに言った。「ママ、お兄ちゃんたちに手伝ってもらおう!」
入江和夜はそれに続けて言った。「そう、建吾に手伝ってもらおう!」
藤本建吾と寺田芽は揃って彼を見つめ、まったく同じ顔に同じような疑問の表情を浮かべた:
「どうして建吾お兄ちゃんなの?」
「どうして僕なの?」
入江和夜は嘲笑うように言った。「当たり前じゃない。藤本グループは将来お前のものになるんだから。僕にはわかってるよ、暴君はもう戻ってこないんだ。ママはお前のために働いてるんだよ!だから、お前が行くべきなんだ!」
藤本建吾:!!
しかも寺田芽は横でうなずきまくっていた。「和夜お兄ちゃんの言うとおりだよ!」
「...」
入江和夜は藤本建吾の肩を叩いた。「行けよ、怖がることないさ。数学オリンピックの問題と同じだよ」
「...」
このビジネスの事が、どうして数学オリンピックと同じだというの?!