第809章 人を解放せよ！！

寺田凛奈は本当に疲れ果てていて、あくびが連続して出た。

彼女は顔を上げて野村智弘を見つめ、ゆっくりと口を開いた。「何の話？」

声には少しかすれた感じと、目覚めたばかりのいらだちが混じっていた。

野村智弘：？

彼は眉をひそめた。

浜田が口を開いた。「私たちは大師姉と話がしたいんです。寺田さん、あなたは……」

言葉が途中で止まり、突然何かに気づいたように、信じられないという表情で寺田凛奈を見つめ、そして野村智弘の方を見た。「社長……」

野村智弘は目を伏せ、突然口元に笑みを浮かべた。「なるほど、寺田さんが瀬戸家の大姉だったとは！失礼しました。しかし、本当に私と璃与の間のことに口を出すつもりですか？」

彼の声は澄んでいて、特に軽やかに言った。「私と璃与の間にはいくつか誤解があって、恋人同士のちょっとした喧嘩をしているんです。寺田さんと藤本凜人さんは深い愛で結ばれているので、私たちの気持ちも理解してくれるでしょう？あなたも恋人の仲を裂きたくはないでしょう？日本には古い言葉があります。『寺を壊しても、婚姻は壊すな』というものです。」

「それはずいぶん昔の言い方ですね。」寺田凛奈はアーモンド形の瞳で野村智弘を見つめた。「今の女性たちは皆、自立していて、あなたと一緒にいるかどうか、あなたと一緒に行くかどうかは、私の姉…伯母が決めることです。」

野村智弘：？

寺田凛奈は再び眉を上げた。「人を解放すれば、あなたたちを安全に帰らせてあげます。そうでなければ、野村さんは日本で新年を過ごすことになりますよ。」

「……」

野村智弘は眉をきつく寄せた。

浜田は傍らで諭すように言った。「社長、人は先に解放して、後で連れ出す方法を考えればいいんです。」

野村智弘は深く息を吸い込み、ようやく佐竹璃与の方を見た。

彼は日本に来て、寺田家と藤本家の実力では彼を留めることはできないと思っていた。

しかし、まさか瀬戸門と京都の闇勢力が絡んでいるとは思いもよらなかった。彼の百人ほどの手下たちが強行すれば、確実に帰れなくなるだろう。

野村智弘はいつも目先の損は避けてきた。

しかし、このまま佐竹璃与を手放すのか？彼は納得できなかった！

傍らで、この騒ぎを見ていた三人の子供たちはつま先立ちになり、入江和夜が尋ねた。「彼は人を解放するのかな？」