第813章 お父さん??

寺田凛奈も少し呆然としていた。

前方のその横顔は藤本凜人とまったく同じで、特に鼻筋の高さ、さらには顎のラインの力強い曲線まで、藤本凜人そのものだった。

でも藤本凜人はM国にいるはずだ、彼女はそれを知っていて、だからここに彼を探しに来たのだが、彼ら四人がM国に来たのはとても控えめで、飛行機のチケットさえ石山博義に頼んで身分を隠して飛んできたのだ。

だから誰も彼女がM国に来たことを知るはずがない、なのにどうして藤本凜人がここに現れるのだろう?

それに、藤本凜人がここに現れるなら、彼は死んでいなかったということになる?あっ違う、偽装死だったということか?

寺田凛奈が考えている間に、寺田芽はすでに駆け出していた。「藤本凜人」の腕に触れようとした瞬間、突然数人の黒服のボディガードが駆け寄ってきて、寺田芽を阻止した。「お嬢さん、近づかないでね〜」

寺田芽:?

彼女は目を瞬かせ、藤本凜人を指さして言った。「パパを探してるの!」

しかしボディガードたちは彼女が何を言っても、通そうとしなかった。

寺田芽は仕方なく、中にいる人に向かって大声で叫んだ。「パパ、パパ、芽だよ、わからないの?」

寺田凛奈も急いで近づいたが、状況がわからなかった。

おそらく彼らの騒ぎ声を聞いたのだろう、その「藤本凜人」はようやくゆっくりと振り返った。

彼が振り返った瞬間、寺田凛奈と寺田芽はすぐに呆然とした。

目の前の人物は藤本凜人とほぼ同じ横顔だったが、正面から見ると三割ほどしか似ておらず、さらにこの人物は少し病弱そうで、顔色が青白く、藤本凜人と同じ細長い目をしていたが、より弱々しく見え、唇は藤本凜人よりも少し厚く、肌にはメイクが施され、厚いファンデーションが塗られていて、少し女性的な印象を与え、藤本凜人の冷酷さと何気なく漂わせる高貴で魅惑的な雰囲気とはまったく異なっていた。

彼は寺田芽を見た後、一瞬驚いたようだったが、すぐに低く嘲笑うように言った。「君は僕のファン?今のファンは本当に...子供まで連れて追っかけに来るのかい?」

ファン?追っかけ?

寺田凛奈は呆然とした。

「あああ、瑛士、こっち見て!」