高岡佳澄は携帯電話を持って外に出て電話をかけ、ライスが帰ってしまわないかと心配し、出る際にもう一度彼を見た。
彼が出て行くと、ようやく誰かが尋ねた。「ライス社長、このプロジェクトは元々期待していなかったし、この教授を見てください、信頼できそうにありません……実験室のメンバー構成を聞いたとき、たった二人しかいないと言いました……こんな実験プロジェクトに、本当に投資するのですか?」
ライスもそっとため息をついた。
彼は実は高岡佳澄を知っていた。スタッフのような場所で、日本人教授として名を知られるのは難しいことだ。だから彼のプロジェクトを見たとき、少しでも投資する価値があれば試してみようと思った。
どうせ社長のお金は使い切れないほどあるのだから、愛国心として、同胞を支援するつもりだった。
しかし、この高岡佳澄がこれほど頼りにならないとは思わなかった。
彼の様子を見ると、学生を一人しか採用していないのか?
これでどうやってプロジェクトを進めるというのか?!
彼に投資するのは、お金をばらまくのと何が違うのだろうか?
ライスは額をさすりながら、「もういい」と言った。
このプロジェクトへの投資はもうないだろう。
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寺田凛奈はライスについてきて、彼が何をしに来たのか見てみたかった。
この建物に入ったばかりで、まだエレベーターにも乗っていないうちに、指導教員から電話がかかってきた。凛奈が電話に出ると、指導教員が話し始めた。「リサ、さっき会ったときに言い忘れたんだけど、実験室の枠を一つ確保したの。あなたの指導教授が今、手伝いが必要だから、実験棟の706号室に行ってくれる?」
実験室の枠?
これはまさに渡りに船だ!
彼女はちょうど実験室に潜り込んで、堂々と資料室に行く方法を考えていたところだった!
彼女はすぐに答えた。「はい、今すぐ行きます。」
寺田凛奈は言い終わると、顔を上げて見回し、自分が来たのがまさに実験棟だと気づいた。
706……7階だ。彼女はエレベーターのボタンを押した。
エレベーターはすぐに1階に到着し、彼女は乗り込んで7階のボタンを押した。
チン。
エレベーターが到着した。
寺田凛奈がエレベーターから出たところで、角を曲がったところから二人の会話が聞こえてきた。