固定電話を取ると、秦書畫の声が聞こえた。
「ママ」蘇千瓷は呼びかけた。
秦書畫は彼女の声を聞いて、一瞬黙った後、尋ねた。「司承はいるの?」
「お風呂に入っています」
「そう、彼の携帯に電話しても誰も出ないと思ったわ。じゃあ、お風呂から出たら電話をくれるように言ってちょうだい」
「はい、何か用事があるんですか?こんな遅くに」
「別に何もないわ。じゃあ、切るわね」
秦書畫には蘇千瓷と雑談をする気が全くなく、受話器から聞こえる話中音に、蘇千瓷は少し寂しい気持ちになった。
階段を上がると、書斎から携帯の着信音が聞こえてきた。
蘇千瓷が入ると、厲司承の携帯の画面が点滅しているのが見えた。
唐夢穎からだった。
蘇千瓷は電話に出たが、声を出さなかった。