ドアを開けると、部屋に漂う淡い煙草の香りが鼻をついた。
奥へ進むと、冷たい風が吹き込んできて、蘇千瓷は思わずぞくっとした。
窓が大きく開かれ、白いカーテンが風に揺られて舞い上がっていた。外は既に真っ暗で、月が明るく星がまばらに輝き、風に木々が揺れていた。
厲司承は窓辺に立ち、先ほどと同じぴしっとしたスーツ姿で、肘を窓枠に乗せ、長い指の間にタバコを挟んでいた。
煙がゆらゆらと立ち上り、風に吹かれて室内へ流れ込んでいた。灰が長く伸び、風の入り口で今にも落ちそうだった。
誰かが入ってきたのに気づいても、厲司承は振り向く素振りも見せず、ゆっくりと灰を灰皿に落とした。彼の声は低く穏やかで、風の中でやや揺らいでいるように聞こえた。彼は言った。「君は僕のことが嫌いなのか?」
突然の問いかけに、蘇千瓷の心は激しく揺れた。
まるで隕石に衝突された惑星のように、一瞬にして激しい衝撃を受けた。
君は僕のことが嫌いなのか……
短い言葉だったが、彼女のすべての悔しさ、すべての苦しみを呼び起こした。
蘇千瓷は彼の背中を見つめ、瞳の光が徐々に収まり、予期せぬ涙の層が湧き上がった。
そんなはずがない……
どうして嫌いになれるの、あなたは厲司承なのに……
しかし、素早くその涙を拭き取り、蘇千瓷は何も聞こえなかったかのようにクローゼットを開けに行った。
しばらく帰っていなかったが、クローゼットの中には既に六姉さんが秋物の衣類に替えておいてくれていた。いつでも帰ってこられるようにという配慮だった。
パジャマを一着取り出し、蘇千瓷はバスルームに入ると、もう涙を抑えきれずに噴き出した。
彼女は泣き虫ではなかった。
前回、あのお金持ちの奥様たちにひどい目に遭わされた時でさえ、歯を食いしばって、少しも泣きたいと思わなかった。
でも厲司承に関しては、涙が堰を切ったように止まらなくなるのだった。
彼が彼女に与える影響は、あまりにも大きすぎた……
前世でも今世でも、彼に対して無関心でいられるはずがなく、むしろ彼を見るたびに胸がときめいてしまうのだった。
こんな厲司承を、どうして嫌いになれるだろうか?
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