厲司承は一晩帰ってこなかった。
蘇千瓷は夜中にうとうとしながら、彼が帰っていないことに気づいた。
電話をかけても、話し中を示していた。
窓の外を見ると、空が白み始め、風が強く、窓辺を「ヒューヒュー」と音を立てて吹き抜けていた。
蘇千瓷はめずらしくこんなに早く起き、身支度を整えてリビングに出た。
厲靳南は義姉をこんなに早く見るのは初めてで、挨拶をした。「やあ、お義姉さん、こんなに早くですか?」
「うん」蘇千瓷は携帯を持ちながら、再び厲司承に電話をかけた。
厲靳南が近寄って来て尋ねた。「兄貴に電話?」
「そう、昨夜あなたの兄さんが帰って来なくて、電話も出ないの」
「仕事で忙しいんじゃないですか?心配しないで、兄貴は浮気なんかしませんよ」厲靳南はコーラを開けながら言った。「うちの兄弟は皆、自制心が強いんです」