第640話:久しぶりだね、欧さん

十二年。

陸亦寒は蘇千瓷のために十二年間待ち続けた。

人生にいったい何個の十二年があるのだろうか?

余裏裏はベッドに横たわり、スマートフォンを握りながら、ホーム画面を開いた。

それは一枚の集合写真だった。

写真の中の少女は横柄な表情で、両手でスマートフォンを持ってセルフィーを撮っていた。

そして少女の後ろには、ワインレッドのスーツを着た男性が、少し邪悪な笑みを浮かべながら、両手で抱きしめ、美しい潤んだ目を伏せて、少女の顔を見つめていた。

久しぶりね、オウさん。

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厲司承は目隠しをされ、車の後部座席に放り込まれた。

隣から刺激的な香水の匂いが漂ってきた。唐夢穎だ。

両手を後ろで縛られ、目を隠された厲司承の聴覚は特に鋭敏になっていた。

周りには、この辺りの人の声の他に、夜の虫の鳴き声しか聞こえなかった。

車は長い時間走り続け、厲司承の計算では、おそらく70〜80分ほど経って、ようやく停車した。

車速は一定で、時速40〜50kmほど。つまり、先ほど出発した別荘からそれほど遠くない場所だった。

前回の調査で、TLは単なる目くらまし術で、康シティの本当の隠れ家は別の場所にあることが分かっていた。

車は途中で信号を5回停止し、2つの坂を上り、一度高速道路に乗った。ほとんどの時間、周りは騒がしかった。

つまり、この場所は比較的繁華な地域にあるが、今はとても静かな環境だ。

おそらく市の中心部か、その周辺の高級住宅街かオフィスビルだろう。

厲司承が心の中で推測していると、すぐに二人のボディーガードに車から引きずり出された。

中に入ると、カードをスワイプする音が聞こえた。

しかし周りは依然として静かで、エレベーターに乗るまでそうだった。エレベーターは素早く上昇した。

目隠しをされ手を縛られた人を連れた二人のボディーガードに対して、誰も疑問の声を上げない。ここではこのような状況が日常的なのだろう。

このビル全体が、恐らく薄氏の所有物なのだ。

しかし、薄氏の名前を掲げているはずはなく、対外的には別の目立たず疑われない名前があるはずだ。

ただ、この場所はいったいどこなのか?

「ディン」

おそらく1分以上経って、エレベーターはようやく到着した。

厲司承の心が少し動いた。