第719話:呆気に取られて

「なぜダメなんだ。会社は私のものだ。誰を残すかは私が決める!」李社長は顔を曇らせた。「それに、会社では義兄さんと呼ぶなと言っただろう。よくない印象を与える!」

李社長の冷酷な態度は、徐靜に絶望感を与えただけでなく、余裏裏自身も呆然としていた。

一体どういうことだ?

李社長は彼女を残し、徐靜を切るというのか?

何年も主任を務めてきた徐靜を、こんな形で解雇するというのか?

本当なのか、嘘なのか……

余裏裏は夢を見ているような気分だった。自分があんなことをして、あんなに挑発的な態度を取ったのに、昇進させてくれるなんて?

まるで幽霊でも見たかのようだ!

余裏裏が呆然としている一方で、他の社員たちは歓声を上げ始めていた。

「余裏裏が主任に?」

「すげえ、余裏裏の能力なら主任として申し分ないだろ。前の四季村の案件を誰が成功させたか忘れたのか!」

「そうだよ、あと俺の萬里テクノロジーの案件もさ。マジで、彼女がいなかったら、徐靜にやられてたよ!」

「えっ、みんなも助けてもらったの?私だけかと思ってた。裡裡が私に密かな想いを寄せているのかと思ってたよ……」

「ふん!考えすぎだよ。裡裡は女神様だぞ。女神様っていうのは遠くから崇めるもので、軽々しく近づくものじゃないんだ!」

周りの議論が盛り上がる中、余裏裏は依然として呆然とした状態が続いていた。

徐靜は我慢できなくなり、叫んだ。「どうしてこんなことに!余裏裏なんて何者でもない。この部門をちゃんと率いることなんてできるわけない。義兄さん、ただ彼女が綺麗だからってそんな……」

「つまり、私は見た目だけで判断して能力を見ていないと言うのか?」李社長は顔を曇らせた。「もしそうなら、お前はとっくに降格されているはずだ。なぜお前をこれまで会社に置いておいたと思う?お前が裏でやってきたことを知らないとでも思っているのか?徐靜、私との関係を壊すつもりか。」

徐靜はその言葉を聞いて、凍りついた。

李社長は彼女を無視し、余裏裏の方を向いて言った。「余ちゃん、一旦帰りなさい。しばらく休養を取って戻ってきてください。そのケガ、傷跡が残ったら良くないからね。」

余裏裏はようやく我に返り、どもりながら尋ねた。「李社長、本当に本気なんですか?」