会社のビルを出ると、李社長の運転手が既に下で待っていた。
家に送られた後、余裏裏は鍵を取り出してドアを開けた。
ここは比較的古い団地で、家賃は手頃な価格だった。団地の環境と安全性も良好で、そのため余裏裏はここに2年間住み続けていた。
玄関は頑丈な防犯ドアで、開けて入ると小さなリビングがあった。
ここは1DKの独身アパートで、小さなソファしか置けず、テレビすら置けなかった。
ソファの近くには小さなパソコンデスクがあり、その上にノートパソコンが置かれていた。その後ろには普段食事をする小さなテーブルがあり、これらを置くと歩く通路が一本だけ残るほどだった。
キッチンとトイレは繋がっており、合わせて3平方メートルもなかった。
しかし、インテリアは美しく清潔で、小粋な雰囲気があった。
余裏裏は背伸びをし、バッグから薬を取り出して小さなテーブルに置き、そして部屋に入っていった。
しかしドアを開けた瞬間、余裏裏はその場で凍りついた。
部屋には、シングルベッド、クローゼット、本棚、そして壁一面に写真が飾られていた。
しかし、これらはすべて見慣れた配置で、余裏裏を驚かせる要因ではなかった。
余裏裏をその場に立ち尽くさせたのは、目の前の不速の客だった。
本来きちんと整えられているはずのシングルベッドに、一人の男が横たわっていた。
その男は背が高く細身で、ベッドに横たわっていた。先ほどまで眠っていたようだが、余裏裏が入ってきたのを感じて目を開けた。
深褐色の瞳は疲れた朦朧とした眠気を帯び、涼しげな目つきで余裏裏を見つめていたが、どんな感情なのかは読み取れなかった。
余裏裏は一瞬呆然としたが、すぐに表情を変え、反射的に写真が飾られた壁を見た。
その写真の壁には...彼女と歐銘の2人の写真ばかりだった。
2人の写真の他には歐銘の写真だけで、すべてのフレームがベッドの向かいの壁一面にびっしりと掛けられていた。
余裏裏の心臓が激しく跳ね、家出した子供が大人に見つかったような気分だった。
困惑し、後ろめたさを感じながらも、同時に抑えきれない喜びも感じていた。
ベッドの男は布団をめくって降り、ゆっくりとベッドの端に腰掛け、瞳で彼女を見つめた。
空気は一瞬にして気まずくなった。