「でも、なんだか気が引けるわ。私がここに長く住んでいたのに、あなたが帰ってきたとたんに引っ越すなんて、これじゃまるで……」
これじゃまるで夫婦生活を始めたいって言ってるようなものじゃない!
事実はそうなのだけれど、蘇千瓷はそれを思い出すと恥ずかしくなってしまう。
あまりにも露骨すぎる……
厲司承は軽く笑って、「今日みたいに、真昼間からベッドルームにいるのは、それの方が適切だと思うのかい?」
蘇千瓷の顔が更に赤くなり、顔を横に向けて彼を見ないようにした。
「もう決まりだ」厲司承は起き上がり、ついでに彼女も引っ張り上げた。「さあ、お風呂に入れてあげる」
「いやよ、自分で入るわ!」蘇千瓷は顔を真っ赤にして、彼を押しのけた。
しかし厲司承は彼女の抵抗を無視して、そのまま彼女を引っ張ってバスルームの中に入っていった。
出てきたときには、もう午後2時を過ぎていた。
出るなり、電話が鳴り止まない音が聞こえてきた。
厲靳南からだった。
厲司承はちらりと見ただけで、無視して、ゆっくりと蘇千瓷の服を探して着せてから、やっと電話に出た。
厲靳南はすでに激怒していて、不機嫌な口調で文句を言った。「二兄さん、ひどすぎますよ。全部私一人に押し付けて、私だって私生活があるんですよ!」
厲司承はスピーカーフォンにして、自分の服を探しながら、厲靳南の言葉を聞いて、だらけた声で応じた。「お前は暇なんだから、会社の面倒を見てくれたっていいだろう?給料も出すし、株式も10パーセント追加しようか?」
「いりません!」厲靳南は怒った。「お金なんかいりません、自分でやりたいんです!」
厲司承は少し困ったように聞いて、「わかった、とりあえず任せておいて、気が向いたら手伝ってやる」
「私は自分で会社を立ち上げたいんです」厲靳南の声は真剣になった。「二兄さん、康シティでエンターテインメント会社を作りたいんです。すでに準備を始めていて、何人かのマネージャーとタレントも引き抜いています。こちらの引き継ぎをしたいので、その後は会社の仕事から手を引かせてもらいます」
「突然だな?」厲司承は少し驚いた様子だった。