第809章：おじいさんが会いたがっている

陸亦寒は仕事を続けていると、午後4時頃、突然蘇千瓷から電話がかかってきた。

絶え間なく点滅する二文字を見て、陸亦寒は夢を見ているような気がして、少し呆然としてから電話に出た。

「千千」

「亦寒、時間ある？」

陸亦寒はパソコンの画面に数行しか打ち込まれていないコードを見て、頷いた。「あるよ」

「病院に来てくれない？おじいさんがあなたに会いたがってるの」

「おじいさんが僕に会いたいって？」陸亦寒はさらに驚いた。

厲司承が戻ってきてから、おじいさんは彼を呼び出すことはなかった。陸亦寒もそれは理解していたが、一ヶ月以上経って、また自分を呼び出すとは思ってもみなかった。

「うん」

「どこの病院？すぐ行くよ」陸亦寒は机の上の車のキーを取り、立ち上がった。

同僚はすぐに不穏な空気を感じ取り、尋ねた。「どこ行くの？早く仕事終わらせようよ！」

「ちょっと出てくる、すぐ戻るから」そう言いながら、陸亦寒は既にドアを出ていた。

「おいおい、こいつ...」

陸亦寒は後ろからの呼び声を無視し、車を運転して素早く康城軍病院に到着した。

蘇千瓷が言った病室に着くと、厲司承と蘇千瓷が部屋の中にいて、子供たちも大人しく病室にいた。

おじいさんはベッドに半身を起こして横たわり、陸亦寒を見ると溜息をついた。「陸くんが来たか」

「おじいさん」陸亦寒は声をかけた。

この老人を見て、陸亦寒は少し心が痛んだ。

この老人は、前回会った時よりも少し年を取ったように見えた。

以前は頻繁に会っていたので気づかなかったが、一ヶ月以上ぶりに会って、陸亦寒はようやくこの老人もかなりの年齢だということを実感した。

「司承、千瓷、子供たちを連れて外に出ていなさい。陸くんと話があるんだ」

厲司承は陸亦寒を一瞥し、頷いてから娘を抱き上げて出て行った。

陸亦寒はおじいさんと病室で長時間、優に一時間以上話をして、やっと出てきた。

彼が出てくるのを見て、病室の外で待っていた人々の視線が一斉に彼に注がれた。

「おじいさんは何を話したの？」蘇千瓷は陸亦寒を見つめて尋ねた。

陸亦寒は微笑んで、ゆっくりと首を振った。「それは僕とおじいさんの秘密だよ」

一歩前に進み、陸亦寒は厲司承の肩を叩いて言った。「おじいさんのことをよろしく頼む。用事があるから、先に行くよ」