第832章:さようなら

小さな歌を口ずさみながら、余裏裏はリビングルームに歩み入った。

ノートとペンを取り出し、小さなテーブルの横に座った。

ガスの匂いがますます強くなり、余裏裏はペンの先を噛みながら、嫌そうに眉をしかめた。

しかし、しばらく考えても、何を書けばいいのか分からなかった。

思い切ってペンを握り、線を描き始めると、すぐに一人の男性の顔の輪郭が浮かび上がった。

顔には邪な笑みを浮かべ、色気のある桃花眼が艶やかで、わずかな線だけで絶妙に描かれていた。

余裏裏はその顔を見て、軽く微笑んだ。

続いて、その男性の下に二人の赤ちゃんを描いた。

おしゃぶりをくわえ、おくるみに包まれた二人の小さな子は、そっくりだった。

余裏裏はさらに笑い声を漏らし、目頭が熱くなった。

ペンを投げ捨て、余裏裏は携帯を手に取り、連絡先リストをめくって陸亦寒のチャットを開き、ビデオ通話をかけた。