羅戦は足を止め、その場に立ち止まった。若拉は彼の腕を引っ張ったが動かなかったので、振り返って羅戦を見て尋ねた。「どうしたの?」
羅戦は軽く首を振り、言った。「何でもない。ただ、まだ解決していない用事を思い出しただけだ。君は友達を誘って食事に行くか、あるいは先に帰ってくれないか?会社に戻って少し仕事を片付けなければならないんだ。」
若拉はその言葉を聞いて、少し落胆した様子だった。
しかし羅戦の表情を見て、彼女は頷いた。「わかったわ。でも、あまり遅くまで働かないでね。夜はちゃんと早く寝てね。」
「うん、わかった。」
若拉は名残惜しそうに彼を見つめ、一歩踏み出して羅戦の前に立った。
羅戦は少し驚き、彼女を不思議そうに見た。
若拉は両手を彼の肩に軽く置き、その柔らかな感触に羅戦は何か不思議な感覚を覚えた。
若拉の頬が少し赤くなり、つま先立ちになって彼の唇に軽くキスをした。
羅戦はその場に呆然と立ち尽くし、若拉は顔を向け直す勇気もなく、足早に立ち去った。
若拉が急いで走り去る後ろ姿を見ながら、罪悪感と自責の念が潮のように押し寄せてきた。
若拉はいい子だ。しかし...自分には彼女に見合う資格がない。
魂が抜けたように通りに立ちつくし、しばらくして羅戦はようやく携帯を取り出し、陸亦寒に電話をかけた。
陸亦寒は運転中で、車載電話をちらりと見て、表示された名前を確認してから電話に出た。
「もしもし?」
「陸亦寒、時間ある?」
「何の用だ?」
「まず時間があるかどうか教えてくれ。」
「まず何をしたいのか言ってくれ?」
「一緒に食事でもしないか。」羅戦の声には諦めの色が感じられた。
陸亦寒はその言葉を聞いて、心の中で何かを察したようだった。
おそらく、彼の彼女を紹介したいのだろう?
しかし陸亦寒は何も知らないふりをして言った。「ああ、いいよ。じゃあ一緒に食事しようか。どこに行く?」
羅戦は少し考えて言った。「君の家はどうだ?君が作る酸菜魚が食べたい。」
「おいおい、さすがにそれはないだろう、羅戦。俺を使い倒す気か?」陸亦寒は呆れて笑った。「他人の手柄を自分のものにするつもりか?」
羅戦は一瞬黙った。他人の手柄を自分のものにする?
その言い回しはそういう使い方だったか?
印象では違うような気がするが...。